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くちぶえブログ

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木漏れ日の家で

原題は、” Pora umierac”
「死の時」や「死んだ方がまし」と少し暗いテーマのように聞こえるけど、91歳の老女が愛犬とともに死を迎える前に、人生のこと、家のことをじっくり考え、自分と向き合い決断するとても前向きな映画。

91歳になるアニェラは、ポーランドのワルシャワ郊外の森の中に建つ古い洋館で、愛犬フィラデルフィアと静かに暮らしています。内容はほとんどが家中でのことで、毎日愛犬フィラと会話を交わしたり、窓から両隣を観察するのが習慣というなんてことない日常。まわりから見れば、地味で実につまらない生活と思われるだろうが、そんな生活の中には喜び、辛さ、寂しさ、葛藤いろいろなモノが詰まっています。

この映画は、モノクロで陰影が美しく、木漏れ日の煌めきはカラ―以上に眩しい。光と影をかなり意識的に見せており、ガラス越しの歪んだ像や反射する光など、キラキラした映像は万華鏡をのぞいているよう。
この独特の味のあるガラス窓。アニェラが外の世界を観るときは、いつも窓ガラス越しで、両隣の生活や風景、亡き夫との生活、幼い頃の息子との思い出を映し出し、心の中にも煌めきが蘇ります。

とても静かな映画で、時計の音、マッチで火をつける音、普段の生活の中でかき消されるであろう音が耳の中にすーっと入ってきて、アニェラと一緒にゆっくりと穏やかな時間を過ごしているような、ゆったりした気持ちになります。
思い出のシーンや後半に流れる音楽もやはり美しく、モノクロームにぴったりで、物哀しいような、小さな喜びが芽生えたような複雑な感情が湧き出てきます。


そしてアニェラがとても魅力的。美しく刻まれた皺、91歳とは思えない眼力。身につけているものも上品で素敵だし、鏡の前でワンピースをあてがってニッコリ微笑む姿、電話をとるために、2階の階段からバタバタ降りてくるところなどは、少女のように愛らしい。
また家のこと、家での生活を大切にしていて見習う所がたくさん。
最後のアニェラの決断にも、共感できました。

それから忘れてないけないのが愛犬フィラ(フィラデルフィア)の演技! アニェラの話に相づちを打ったり、電話が鳴ると、アニェラと一緒にバタバタ階段を走り降りるところ、くるくる変わる表情が素晴らしい。そして最後のシーンの表情にはやられました。
猫派のわたしですが、ちょっと犬いいかも。。と思いました。

このアニェラ役のダヌタ・シャフラルスカさんは、撮影時91歳で、撮影後も同時に3つの舞台をこなしたんだとか。ものすごいパワー。

「美しく老いる」ってこういうことなんだなぁ。こんな風に素敵に歳を重ねたいと思える映画でした。それにしても、今回は観客の年齢層がいつも以上に高かったなぁ…


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by pear_1021 | 2011-08-15 15:43 | エイガ
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